時刻は23:45。

私はサーモンをマリネにすべく、奮闘していました。

「ナヴ、俺帰るで?」
「あ、はい。」
あれ?副料理長がもう仕事終わり?
それとも、駐車場が閉まる前に車だけ出して、
また戻ってくるのか…?
「ほんまに帰るで?いいの?」
待っとけよ、って言わないっつーことは
マジで帰るつもりですか。(どういう判断基準だ)
「はい。私もこれやったら帰ります」
「あ、そ。じゃ、お疲れさん」
「お疲れ様です〜」

他のスタッフの手前、
『副料理長が帰るって言うなら
 やりかけの仕事ほうり出して私も一緒に帰る〜』
とか、そんな真似ができるかっ!!
(人目がなかったら帰るんか)
つーか、仕事やりかけで帰るのは嫌!!

ってことで、
さっさとサーモンをマリネして。

背後では居残り組の会話が。
「あれ?副料理長は?もう帰った?」
「帰りましたよ」
「マジで?!」
「マジで。」
そこに鳴り響く、厨房の電話。

さて、私はサーモンを。

ラップで包んで。

パックして。

えぇっと…

そこで、ふと。
声がかけられる。

「…ナヴ、電車あるんか?」

言われて、時計を見上げれば。
現時刻、24:15。

「うわぁああっ!!!!(絶叫)
 すいません、帰ります!お先に失礼します!!」

24:25の電車に乗らなきゃ終電に間に合わんのですよ。
見事に、パックしかけのサーモンをほうり出し(あかんがな)、
トップスピードで厨房を去り、急いで着替えて、
ビルを出る時に副料理長の名前が退出記録にあるのを確認して、
「本当に帰ってるし!」
と受けた衝撃もそのままに、駅へと向かい。

なんとか電車に間に合ったわ〜、とホームに佇んでいたら。

副料理長からの着信が。

「…もしもし?」
「電車乗れた?」
「はい。今、乗れました」
「傘は?」
「あります!」
「それならいいけど。さっき電話した時、
 まだパックとかしてたから、
 ナヴは電車間に合ったんかな〜と思って。」
(ってことは…あの厨房への電話、副料理長だったんスか?!)
「はい、間に合いました。…でも、あれ?
 副料理長、もう帰られてますよね?」
「あぁ、今日は家帰っても飯ないから食って帰ろうと思って。
 今、帰ってるとこ。」
「そうだったんですか〜」(ぬぁにぃいい?!)
「間に合ったならいいねんけどな。大丈夫かなぁと思ったから。
 じゃあ、お疲れさん。」
「はい。有難うございました。お疲れ様です」

ふぅ、と一息。
電車の窓に軽い頭突きをくらわしつつ。

もしかして…

今日は…

 終電を逃してしまったのに財布は空。
 どうやって帰ろうかと絶望していたナヴ。
 そこへ先に帰ったはずの副料理長から電話が…。
『えぇっ?!どうして?!まるで…魔法使いみたいっ☆』(頭悪)

…とか、そういう脚本が用意されていたんですか。
そこんとこどうなんだ、ロマンスの神様。(待て)

とにかく。
終電も逃さない、傘も忘れない、用意周到な自分が少し憎らしかった帰り道。

来週の予告を見せてくれ。

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